以前は、socket preservation、日本語で抜歯窩保全術(抜歯窩温存術)と呼ばれていました。
抜歯するとその歯を支えていた周囲組織、特に骨組織が痩せてきます。それを防止して、周囲組織を健全に保つことが、socket preservationの目的です。ところが近年では、欧米の論文、学会では、socket preservationという言葉は使われなくなりました。

変わってridge preservationという言葉が使われるようになりました。「歯槽骨頂を維持する」というニュアンスです!また、これとは別に、socket augmentationという術式が重要視されています。『失われた歯槽骨を、骨増生する。』という意味です。つまり、ダメージを受けた歯槽骨を再生するために、骨誘導能を持つ生体材料を使用して、手術をする必要があります。

本日、socket augmentation(歯槽骨増生術)をした症例を見てください。左上5番目(上顎左側第二小臼歯)です。噛むと痛い、時々排膿する。と、訴えて来院されました。レントゲンにて、破折線が明瞭に認められ、更に、下記CTで診ると、破折した歯牙の周囲組織は、喪失し、上顎洞粘膜(副鼻腔粘膜)まで肥厚していることが、分かりました。

わかりやすいように肥厚した上顎洞粘膜をピンク色でマーキングしました。左右比べると、その違いが分かります。そして青い部分が、骨増生した補填剤です。

抜歯→不良肉芽掻爬→洗浄&レーザー照射→成長因子+骨補填剤→コラーゲン→フィブリンメンブレンを補填し、縫合しました。

患者様はインプラント治療を希望されています。もし、単純に抜歯しただけなら、その後、骨増生術をして、インプラント埋入術、更に結合組織移植術など併用する必要があります。抜歯時に歯槽骨増生術を行う意義は、手術の回数を減らすことができます。結果的に患者様の負担を最小限にすることができます。そして何よりも、インプラント治療は歯を失ってからではなく。歯を失う前から、正しい診断とエビデンスが重要です。

ヒロデンタルクリニック