失活歯の運命
失活歯とは、『読んで字の如く、活動を失った歯。』と、いう意味で、神経を治療した歯のことです。
歯の内部には、神経と血管束が通ってます。むし歯が進行し歯痛で神経を抜く治療を行うと、神経のみならず動脈と静脈も失ってしまいます。つまり健康な歯は生活歯と呼ばれ、血が通っていて、酸素の供給と栄養の供給を受けているのです。これに対し、神経を断ち切った失活歯は、酸素と栄養の供給を絶たれ、活動を失うのです。
このX-Rayが神経治療後の写真です。根に白い線が見えるのが、失活歯です。
前歯の場合、神経を抜く処置は、歯の裏側から、神経まで穴を開け、治療します。治療直後では、その穴を塞いでしまえば、ほとんど目立ちません。しかし、2年、3年が経ち、少しずつ変色を来たし、歯が黄ばんだり黒ずんできます。審美障害とともに駆逐した木の様に、脆くなっていくのです。
上の写真は、神経を失ってから、五年目の写真です。黄色くなっている歯が失活歯です。
そうなると補綴処置(被せる治療)が必要となります。下記の写真の様に、まず、土台を立てます。つまり、歯冠部の基礎になる部分です。以前は、メタルが主流でしたが、現在では圧倒的にファイバーコアが選択されます。その理由は、メタルと比べ、審美性、光透過性、密閉性に優れ、何よりも柔軟性があるので、歯根を破折させるリスクを減少させます。
上の写真がファイバーコアを装着した写真です。
次に、それを削り、精巧な歯型を採ります。出来上がった被せ物が、ジルコニアセラミッククラウンです。歯の代わりになる材質は、何種類かありますが、元来歯は、光を通す素材なので、光を遮断する金属は、好ましくありません。ジルコニアという素材は、光屈曲性がダイヤモンドのように高く、白く、美しく、軽く、透明度が高く、丈夫で生体親和性が良いのです。従って、歯茎を退縮させず、長い間、美しさを維持できます。
しかしながら補綴処置された失活歯は、その患者様の口腔内環境に左右されますが、さらなる時を経て、歯根破折を招き、抜かれてしまうこともあります
上の写真は、ファイバーコア+ジルコニアセラミッククラウンで補綴処置をしたのですが、根破折してしまいました。
そうなるとブリッジかインプラント治療が選択されます。現在の歯科学ではインプラント治療が審美的にも予知性でも圧倒的に有利です。でもインプラント治療は、高度な知識とテクニックが求められるので、医療機関によって大きな格差があります。
先の根破折症例にインプラント治療を行いました。
我々歯科医師は、神経を失わないように、歯を失活させないように努めなければなりません。そして、美しい歯並びと何でも噛める咀嚼力、口腔機能を健康に保つことが重要です。
ヒロデンタルクリニック